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ごめんねの言葉が無意味だって知ってる。
自分がわがままなのもわかってる。
それでも失いたくなかったのは…。
目が覚めたらすぐ目の前にレインの顔があった。
驚きに声を上げそうになって慌てて唇をかんだ、まだレインは寝てるから。
いつもは一番すぐ近くにいるレインだけれど、こんなに間近に顔を見ることはなかなかなくて。
夕日に照らされてオレンジに染まった肌に睫毛が長く影を落している。
ふっくらとした唇は艶やかでやわらかそう。
今は閉じられているけれど、青い瞳はいつでも優しく笑ってくれる。
大好きな、自慢の妹。
「どこにもいっちゃヤダよ?」
自分より早く大人になってしまった彼女にちょっとだけ嫉妬したけれど、それよりも何よりも感じたのは置いていかれるという恐怖感。
一緒にいるのが当たり前で。
これからもずっとずっとそうなんだと思ってた。
それなのに。
「シェイドは好きだよ、でも…」
このシェイドに向ける感情は、レインへの好きとたぶん違う。
初めて受け入れた父以外の男の人がシェイドで、だから戸惑ったり悩んだりもした。
それでも、好き、なんだと思う。
だけど。
それはレインがいたから。
レインが聞いてくれたり一緒に悩んでくれたりしたからやっと自分の気持ちがちょっとだけ整理できて。
ちょっとづつ、これからのことを考えられるようになったのに。
「レインがいなくなるのはもっといやだよ…」
レインがシェイドと結婚する。
自分が大好きな2人だから、きっと素敵な王と王妃になる。
プリンセスとして祝福するべきなんだろうとなんとなくわかってた。
だけど、ダメだった。
シェイドの隣に立つのが自分じゃない。
そして、レインの横に自分がいない。
それが、耐えられない。
だからこんなに喚き散らして父や母に訴えた、いつも以上のわがままさで。
そうすれば、レインもシェイドも戻ってくるよと教えられて。
自分で考えることもせずにただそれに縋った。
「ブライトの言葉通りだった…レインが、戻ってきてくれて嬉しい」
今考えれば自分がとんでもないことをしたのがわかる。
ただ自分のためだけに、大事な国の問題をぶち壊した。
「わがままで、ごめんね?」
情けないけれどこれを最後のわがままにするから許して、と鼻を啜る。
散々泣いたはずなのにまだ涙は枯れていないらしい、また視界が滲んできて。
そっとレインの胸に顔を押し付けて誰もいないのにその情けない顔を隠した。
「いいよ」
びくりと震える身体を、寝ていると思っていたレインが抱きしめてくれる。
いつから聞かれていたのだろう。
余りの恥ずかしさに身を縮こまらせて顔をぐりぐりとレインの胸に押し付けた。
すると優しい手がそっと頭を撫でてくれる。
「いいよ、わがままでも」
今は見えないけれど瞳と同じ優しいその声が、そっと溶かしてくれる。
涙も、緊張も、悲しみも…罪悪感も。
「ファインが幸せになるためだったら、いくらでも我侭になっていいよ」
本当なら責められて怒られなきゃいけないのに、その声はどこまでも優しく染み渡る。
昨日からずっと泣きっぱなしだったのに、レインの胸でまた少しだけ泣いた。
ファインが寝付いてからそっとベッドを抜け出す。
窓の外は暗くて寝顔もうっすら窺うことしか出来ないけれど、目元が腫れてるのは嫌でもわかった。
「謝るのは私のほうだよ」
傷つけまいと思っていたのに、逆にたくさん傷つけた。
なによりも、誰よりも大切だったのに。
いくら後悔してもそれは過去のことでしかないのだ。
今はそれより確かめたいことがある。
さっきファインの口から漏れたブライトの名前。
推察するに今回のこの盛大なファインの泣きっぷりはブライトの入れ知恵らしい。
彼女を想う彼がなぜ。
もしかしたらシェイドのいない隙を見計らってファインを奪うかも、なんて物騒な事を考えてもいた。
それでファインが慰められて幸せになればそれはそれでいいとも思っていたのだけれど。
実際そうせずに余計な入れ知恵をした彼がわからない。
「まだいるはずだけど…」
帰還の予定は聞いていない。
帰るとなれば見送るように言われるだろうからまだ城内にいるはずだ。
適当な客間に目星をつけて、レインはベッドを後にした。
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