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「俺は、ファインのドレスが見たいな」
何気ない会話の中の何気ない一言。
でもそれがプロポーズの言葉と同意なのは彼の目の真剣さからわかる。
彼が大好きで結婚だってちっとも嫌じゃなくて、それは素直に嬉しいのだけれど。
「…返事、ちょっとだけ待ってくれる?」
ずっと夢だったオーダーメイドのウェディングドレスのお店「shine」。
服飾の専門学校に行って、卒業後は先輩のデザイナーが立ち上げたブランドのアトリエで働かせてもらった。
やっと自分に自信が持てるようになってから、同じように別のアトリエで働いてたレインと一緒に今の店を作った。
今は店の2階の居住スペースに自分とレインの2人で暮らしている。
「次はー?」
「つみれ作って」
渡されたボールには挽き肉が入っていてたぶん丸めろってことだろうと手を動かす。
現在レインと2人で夕食作りの真最中。
普段は2人もしくはシェイドが加わった3人の食卓だが、今日は更にブライトも入れて4人。
にぎやかになるだろう食卓を想像して動かす手は楽しい。
慣れないながらもなんとか作ったつみれは、ちょっといびつでそれぞれ大きさが違ったりする。
レインが作ったら全部同じ大きさの綺麗な球になるのはわかっているが、お腹に入ってしまえばみんな同じ!と思うことにして。
多少見た目が悪いのは目を瞑ってもらおう。
今日は、今日だけは、なんとしてでも手伝いたかったのだ。
ブライトが食べてくれるから。
「出来た!」
「うん、上手上手」
差し出せばレインが笑って褒めてくれる。
次は?とせっついて夕飯の支度を進めていった。
レインがどこかそわそわしているのはわかっていた。
はっきりとは言わないけれど、レインはブライトが好きだ。
それからブライトも。
これはシェイドが言っていたから間違いない。
だからちょっと前、まだブライトがバイトとしてここに来ていたときにレインが怒鳴ったのを聞いてすごくびっくりした。
当然ながらブライトが帰ると、レインは泣きそうな顔で2階の自室に引き上げてしまった。
なんでそうなったのかわからなくて、すごく悲しくて、自分まで泣きそうになったのはまだ記憶に新しい。
それからのレインはやっぱり元気がなくて。
なんとかしてあげたかったのだけれど何も言えなかった、出来なかった。
そうこうしているうちに仲直りしていた2人には呆然とするしかなくて。
好きな人が出来たとか恋人がいるとかレインの口から聞いたことはあまりなくて今回も聞いていないけれど、きっと2人は恋人同士だ。
何も出来なかった自分が悔しいけれど、レインが幸せならそれでいいやと思う。
こんなに幸せそうなレインを見るのはなかなかないから嬉しい。
願わくば、このままブライトがレインを幸せにしてくれますように。
「…だから……で、ってファイン聞いてるか?」
「え!ごめん、なに…?」
食事も済んであまりおいしそうに見えなかった肉団子もレインの手によっておいしく調理されてみんなのお腹に収まった。
食後のデザートにとブライトがシュークリームを買ってきてくれて、レインが今キッチンでお茶の用意をしてくれている。
ダイニングから移動したソファでシェイドとブライトが何か話していたらしいがまったく聞いていなかった。
はぁとあからさまなため息をつくシェイドにあははと笑ってごまかす。
「ここのお店の話をしてたんだよ」
「店?」
「『shine』の由来について。レインと2人で決めたんだから本人の口からの方がいいかと思って」
きょとんとブライトに尋ねれば返ってきたシェイドの答えに納得した。
ずっと夢だったお店『shine』。
レインと2人で考えたその名前。
「あのね、単純かもしれないけど…うちのドレスを着てくれたお客さんの結婚式に、未来に、明るい優しい光が降り注ぎますように、って」
一生懸命考えてこれではひねりも何もないけれど、わかりやすくて響きも綺麗で自分は気にいっている。
大切にしたいのはその気持ちだから。
わかりやすくて伝わりやすいのもいいと思う。
照れながら告げれば、ブライトが優しく笑ってくれた。
哂うことなくそうかと応えてくれる彼。
彼なら。
「このお店はレインと2人の夢だったんだけど…もうひとつ夢があるの」
少しだけ躊躇って、でも伝えたくて。
シェイドとブライトを交互に、真剣に見れば、不思議そうな視線が返ってくる。
少しだけ勇気が欲しくて隣に座るシェイドの手を握ると、優しく握り返してくれた。
その視線は訝しげなままだけど伝わってくるぬくもりが背中をそっと押してくれる。
意を決してブライトを見つめて言い放った。
「レインと一緒に、同じドレスで結婚式がしたい」
たぶん今自分は随分ひどい顔をしているだろう。
わがままを言ってるのはわかってる。
勝手に期待と希望を押し付けて、かなりおせっかいなことも言ってるのもわかってる。
それでもこれはずっとずっと自分の夢だった。
嬉しいときも悲しいときもどんなときも一緒のレインだったから、幸せになるのも一緒がいい。
レインと2人で、幸せになるために、初めて自分たちのためにそれからシェイドとブライトのために、おそろいのウェディングドレスを作りたい。
同じドレスを着て、これから自分たちは幸せになるんだとみんなに伝えて回りたい。
ブライトなら、大好きなレインを取られてもかまわない。
そう思ったから。
「…そうか」
ぽつりとつぶやいたのは隣のシェイド。
どこか納得したような響きを含んでいたのは、プロポーズの答えをいつまでも先延ばしにしていた理由がわかったからだろう。
シェイドにも、わがままを言ってる。
ごめんねと見上げれば苦笑してぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「返事貰ったところで今すぐ結婚するわけじゃないんだから」
もう少しだけ待ってもいいと言ってくれるシェイドにほっとした。
こんなにわがままで愛想つかされたらどうしようと思っていたから。
「…というわけだ」
にやりと笑ってシェイドが見るのはその前に座るブライトで。
シェイドの答えは聞けたけれど、ブライトは。
不安でしょうがなくて縋るように見つめてしまう。
その顔は困ったように笑っていて、心なしか赤いかもしれない。
「もう少しだけ…待ってくれないかな」
言われた答えにうんと思い切りうなずいた。
拒否されなかった!
それだけでものすごく嬉しくて。
安心して綻んだ顔にシェイドもブライトも笑ってくれた。
もうすぐ、まだ先かもしれないけれど、ずっとずっと夢見ていたことが叶う。
幸せはきっとすぐそこにある。
だから早く来い、幸せな未来。
来ないなら自分で掴みに行ってやるんだから。
シェイドがくれた勇気と、レインがくれた優しさと、ブライトがくれた希望と。
それだけあればきっと大丈夫。
「…早くしろ」
「…善処する」
男2人でこんな会話がなされたことはファインもレインも知らない。
* * *
お店の名前の由来が単純ですみません…。
Romanceを始めた頃からずっとこの話が頭の中にあって、やっと書けたので満足です!
可愛くないですか?
おそろのウェディングドレス着るふたご(悦)。
上だけおそろで下はファインはふわふわドレス、レインはマーメイドとかでも可愛いと思う。
その後お店の2階にシェイドが引っ越してきて、レインはお店出てブライトと2人暮らしとか。
夕飯は最初ファインもシェイドのために頑張るけどやっぱりレインのご飯が恋しくて結局レインが作ってお店の2階で4人で食卓を囲むとか。
離れるのが寂しくて週1くらいでレイン&ブライトが店にお泊りとか。
そんなどーでもいいその後設定がいっぱいあります。
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