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女であること、第2子に生まれたこと、それから…プリンセスであること。
それを不幸だと思ったことなど一度もない。
けれど今。
身動きが取れないのは事実で。
だから彼を焚きつけて、八つ当たりにも似た言葉でわめき散らして、彼女を幸せにしてほしいと願ったのだけれど。




ここ数日、ミルキーは悩んでいた。

自分はまだしゃべることが出来なくて、人とのコミュニケーションがとれないことはわかってる。
考えていることも伝えたいこともたくさんあるのに、それをちゃんと正しく理解してくれるのは母と兄だけだ。
なぜかあの2人は自分の言葉にならない心の中身を汲み取ってくれて。
普段は困ることなんか何もないのだけれど。

今、レインがこの城に滞在している。
詳しい込み入った政治的な理由はわからないし、まだ知らなくても良いよと諭されてしまってじゃぁいいんだと思うことにした。
彼女は優しい。
それから、自分の言葉を根気強く理解してくれようとしている。
だから自分も伝えたいと頑張っているのだけれど、どうしてもうまくいかない。
兄を介するのは気が引けた。
かといって忙しい母の手を煩わせることなどもってのほかだ。
うんうんうなっているうちにもうレインにあてがわれた客間についてしまった。
レインが来た日、それはもう嬉しくて飛び込んだこの部屋にも慣れたもので、躊躇うことなくノックをすれば中から聞こえてくるのは優しい声。

「はーい」

そして開けられたドアにレインとその向こうに兄の姿を見つけて驚いた。




兄様は、レインが嫌い?

意を決して問いかけたのは、レインがお茶を入れようと席を立った時。
それに驚いたように目を見開いた兄は、すこし顔を歪ませた。

「そう見えた?」

曖昧にうなずく。
レインがこの城に来てから、兄はなんとなく元気がないと思う。
時々ふっと自分の思考に潜ることが増えた。
元々口数が多い方ではないからみんな気にした様子はないけど、自分にはわかる。
だって大好きだから。
心配するし、不安にもなる。

「そっか…心配かけてごめん」

謝ってほしいわけではなくて。
ちょっと歪んでしまった顔を自覚すれば優しく頭を撫でてくれる。
なんだか居た堪れなくて俯いてしまう。
兄の力になれないことが悲しくて悔しくて。
こんなとき早く大きくなりたいと思う。
必死に兄を見上げれば、そこには思っていたのとは逆の、時たま見せる本当に優しい笑顔があって。

「優しいね、ミルキーは」

わけがわからなくてただ見つめる。
なんだかひどく嬉しそうな声が続きをつむいだ。

「ちょっとだけ悩んでることがあって…でももう大丈夫、かな」

言われたことが良く理解できなかったけれど。
茶器をもったレインが戻ってきたことで、兄はその話題をお開きにしてしまった。





いつの間にかこんな小さい妹にまで心配をかけていたのかと思うと情けない。
今ここに来ているのがファインだったらきっとこんな風に思い気分にならなかっただろうな、と思って唐突に気付いてしまった。

やっぱりファインじゃなきゃダメだ

国のためならば、と思って行動するレインの気持ちはわかる。
自分もそうだから。
この国のためになるのならば、このまま話が進むのはいいことだと思ってた。
だけど。
それじゃ自分が悲しくて。
たぶん、ファインも泣く。
それはこの前のレインの言葉からも、自惚れではないだろう。
彼女が切った啖呵の理由がやっとわかった。
彼女の憤りはどうやらファインのためらしい。
それに苦笑して。
ファインに関してはまだまだレインにはかなわない。
レインに認めてもらえるような、ファインに並び立っても劣らないような。
そんな男になろうと、決めた。






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