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優しく聡明なレインとの会話は楽しかった。
先ほどちらりと目にした景色から意識をそらして、自分を楽しませてくれる。
しかし彼女の視線が自分の後ろ、ホールへ続く扉に向けて柔らかく細められたのを見て、そんな時間が終わりを告げたことを知る。
「レイーン!」
元気よくガラス戸を開けて飛び出してきたファインは、その勢いのままレインに飛び付いた。
それを慣れた仕草で受け止めてグラスを手摺に置いたレインは、少しだけ眉を潜める。
「慣れない靴なんだから走ったらあぶないでしょう?」
「だってー」
口をとがらせて抗議するもどこか楽しそうなのは、レインも本気で怒ってるわけじゃないのを理解しているからだろうか。
それとも後をついてくる、苦笑気味の彼のせい?
軽く頭を振って浮かんだ考えを追いやる。
今は自分の考えにひたる時ではない。
グラスの中味を煽って、意識して笑顔を作った。
「プリンセス・ファイン、姉姫が困ってるよ?」
「私がお姉さんだもん!」
「…ウソだろ」
自分の言葉は彼女を煽るに過ぎなかったようで、返ってきた言葉に今度はシェイドが驚きを返す。
それは自分も同じで。
今までの彼女を思うと、どちらかといえば物怖じせず多少―彼女と比べれば、だが―落ち着きを見せた青の姫が姉だという方が納得できる。
今夜のパーティーでもそうだ。
自分と共に完璧なステップを踏んで、ホールを魅了した。
レインに言わせると単に得手不得手の問題らしいがそれにしても。
困ったように見やった先には苦笑して頷くレインの姿があって。
その腕の中で頬を膨らませる赤の姫は更に幼く見えて苦笑するしかない。
「ほんとですぅー」
その口から可愛らしく漏れた文句に思わず噴き出せば、今度は自分が睨まれてしまった。
寄添う姫達をからかうシェイドとなだめる自分。
柔らかな夜風に当たりながら、ひとしきりバルコニーで戯れていた。
ちくりと刺さるものを感じながらも、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまって。
そろそろ気を引き締めて人の輪に戻るべきだろうが、見られることに疲れたのか離れたがらないファインをレインがなだめすかしている。
人前に出ることが務めではあるが、慣れてはいないような彼女。
あと少しだからと言い聞かせるもはっきりとは言わないが、むずがっているのは明らかだ。
自分も口を開こうとした、その時。
「ほら、掴まってろ。ついでに隠れてればいいから」
腕を差し出すシェイド。
その顔はいささか不機嫌さを見せている。
けれど仕種ではあくまで優しくファインを促す。
そっと、力強く、少しだけ強引に。
そしてこぼれるファインの笑顔。
あの時と、同じだ。
楽隊が奏でるのは軽やかな円舞曲。
誰もが手と手を取りあい、軽やかに踊りだす時間。
そんな中に見た、自分も誘おうと決めていた彼女に手を差し出すのは微かに笑みを浮かべるシェイドで。
差し出された腕に笑顔を見せてそれに応えるのは満面の笑顔を浮かべたファイン。
自分の目の前で行われた、それ。
当然とばかりの、まるでずっと前から決まっていたかのような2人の所作に動けなかった。
自分の入る余地など一分もないような、そんな。
ただショックだった。
つけこまれ、利用された自分の弱さを呪った。
この星をどうにかしようと自分なりに必死だった気持ちだけは間違っていたとは思わないけれど。
その間に育まれたであろう彼女達の絆は、自分が生んだようなものだ。
それが悔しい。
今更彼女を奪うような真似は、出来る筈もない。
「…プリンセス、ファイン」
それは、自分と彼女を区切るけじめの言葉。
己を律するための壁。
決して踏み込んではならない、傷つけてはならない、不可侵の領域。
彼女の、彼と在る幸せのために。
だから、シェイドの腕に守られるようにして歩くファインをただ見守らねばならない。
震える手を握り締めて。
叫びそうになる唇を噛み締めて。
見つめるのは一点、ファインの笑顔のみ。
だからブライトは気付かなかった。
その彼をまた見つめる視線があることを。
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今更ですが、この話の大前提は
シェイドvファイン←ブライト←レイン
…です。
ものっそい一方通行で自分の趣味丸出し(えへ)。
ブライト様は白に限りなく近いグレーでお願いしたく。
次の話は、黒になりきれないグレーのレイン。
そんな2人が大好きだ。
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