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レインは大好きだけど…最近ちょっとだけ、嫌いだ。
例えばこんなとき。
歩くたびに揺れる青い髪を後ろから見つめる。
その隣を歩くのは、レインより頭一個分だけ高い背の、レインよりももっと濃い藍色の髪のシェイド。
たぶん、端から見たらカップル以外の何物でもない。
本当は違うのに。
私だって、シェイドのこと大好きなのに。
自覚したのはつい最近。
ぶっきらぼうだけど優しくて、そのくせどこか不器用で。
そんな些細なことが気になって気になって仕方なかった。
気がついたら、恋になってた。
一番初めに打ち明けたのは当然のごとくレインで。
大好きなレインに知っていてほしかった、話したかった。
そしたらきっとそんな話の大好きなレインのことだ、きっと笑って応援してくれるだろう、そう思っていた。
「実はね…私もシェイドが好きなの」
だからすごくびっくりした。
レインはそんなそぶりも見せなかったのに。
なんだかもやもやしたまま眠りについて、いつもなら美味しいはずの朝ごはんの味もわからなくて。
それでもいつものように二人で寮を出た。
そこにちょうどシェイドが出てきて、おはようと返そうと思ったら。
「おはよう!!」
自分が声をかけるよりも早く、レインが駆け出して。
シェイドの腕に手を絡ませていた。
それからはずっとこんな調子。
休み時間に話をするときも、お昼ご飯を食べるときも、たまに一緒に帰るときも。
必ず、シェイドとの間にレインが割り込んでくる。
今日だってそうだ。
ブライトが持ってきてくれた遊園地のチケットが四枚。
レインとシェイドと来たはいいものの、シェイドの横にはずっとレインが張り付いている。
今も次に乗るアトラクションの順番待ちをしているのだが、さっきじゃんけんに負けたせいでレインがシェイドと一緒に乗ることになってしまった。
私だってシェイドと乗りたい。
レインは大好きだけど、それとこれとは別だ。
それに最近はずっとシェイドとのことを邪魔されてて不満もそりゃ溜まってくる。
「どうしたんだい?」
「…なんでもない」
ブライトが声をかけてくるけれど、ぶっきらぼうにしか返せなくて。
思わず膨らんだ頬をつままれた。
「面白くないのはわかるけど、もうちょっと楽しもうよ?」
笑顔で言われてしまえば申し訳なさばかりが浮かんできて。
「…うん!」
無理矢理作った笑顔で応えた。
* * *
好きな人に振り向いてほしいと思うのは、間違ってるのだろうか。
隣でファインがぎこちなく笑う。
理由はわかりきっている、隣にいるのが僕だからだ。
彼女の視線の先にはいつもシェイドがいて。
今だってそうだ。
シェイドを見つめる彼女の瞳はいつだってきらきらと輝いて、同時に切なげに揺れる。
彼の隣に居るのが、レインだからだろう。
いつだって一緒で、同じものを見て感じて。
そんな彼女たちだからだろうか、想い人も同じになってしまった。
いつもは明るく元気に振舞うファインも、今のこんな状態だからかあまり覇気が感じられない。
しょげるその姿を可哀相だと思いつつも、声はかけられなかった。
彼女を気遣えるほど、自分にも余裕が、ない。
最初に心を打ったのは、彼女の笑顔だった。
ファインとは違い、本当にふわりと、柔らかく笑うレイン。
ついでに風なんか吹いて長い髪がさらりと揺れたりなんかしたらもうそれだけで心臓が跳ねる。
それからはなんとなく彼女を気にして見ることが増えて。
やっと気付いた。
彼女達には髪と瞳の色以外にも違うところがあるんだと。
彼女達は、それぞれ違う人なんだと。
だけれど、見れば見るほどに気付くこともある。
レインの視線の先はいつだってファインだった。
見つめる瞳はいつだって優しくて、甘くて。
ささやかながらファインに嫉妬すらしていた。
けれどいつからか、その視線に鋭さが加わり、対象はシェイドへと変わった。
時に激しく、見つめるというよりぶつけるようなその視線。
それを見たとき、今度こそ本当にシェイドに嫉妬し、そして…微かに感動してもいた。
あの柔らかなイメージしか持たなかったレインに、こんなにも激しい一面があったなんて。
「じゃあ、次はあれに乗るか」
「行く!」
さんざん並んであっという間に終わってしまったアトラクションを後にして、次はどこに行こうかと考えていた矢先に聞こえたシェイドの声。
それに飛びついたのはファインで。
一日中歩き回ってさすがに疲れたのか、レインはちょっとぐったりしていた。
けれどファインが飛びついたシェイドへの視線はやはり鋭いままで。
「僕達も行こうか」
「えぇ…」
臆することなくかけた声には、いつもの穏やかなレインの顔が返ってきて少しだけ残念に思う。
あの激しい視線に晒されてみたい。
受け止めるだけの覚悟はあるから。
「なにか気になることでも?」
またすぐ前に戻されてしまった視線を戻したくて問いかけた。
「なんでもないわ」
微かにその鋭さを残したままレインが笑う。
絶対、その視線ごと振り向かせてみせるから。
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