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昨日に引き続き、幸いにも休みだった今日。
二連休など今までほとんどないに等しかったので一人で有効に使おうと思っていた。
しかし突然の来訪者に予定は狂いっぱなし。
けれど、この繋いだ手が暖かくて。
まぁいっかという気にさせられた。

「ケーキ食べようか」

早く食べないと悪くなってしまう。
食べる?の疑問ではなくて断定なのは、昨日のように断られるのがイヤだから。
自分でも子供っぽいが、とにかくこの無口な彼女とコミュニケーションがしたかった。
朝起きて目の前に――むしろ彼女を抱きしめるように――寝ていた自分に驚いた顔を見せたものの、それ以来昨日同様無表情を保ったまま。
返事もはい、いえ、など端的な言葉のみ。
もうちょっとこう…会話のキャッチボールをしたいのだが。

「どっちが好き?」

差し出すのはショートケーキとモンブランを乗せた2つの皿。
はっきり言えば生クリームが苦手な自分なのでショートケーキは勘弁したい。
それでもわざわざ選ばせるのは、ちょっとでもいいから会話がしたかったのと、好みが知りたいから。
朝からずっとろくな会話もなくてそろそろ諦めかけてきていた。
そのとき思い出したケーキの存在。
昨日アルテッサが買ってきたまま手をつけていなかったそれに、一縷の望みを託していたりする。

「…こっち」

微かに、でもはっきりと揺れた瞳。
少しだけ綻んだ目元に嬉しくなった。

「ショートケーキ、好きなの?」
「…」

言葉には出さずともこくりと頷く。
やっと「はい」以外の肯定を聞けた。
やはり子供にケーキの力は偉大だ。
ティーバックで紅茶を入れて、さっそく食べ始める。

「美味しい?」
「…うん」

頬張るケーキに少しだけ綻んだレインの表情。
これはもうケーキに足を向けて寝られない。
しかしこれとは別にもうひとつ、しようとしていたことがあった。

「食べ終わったら買い物に行こうか」



鞄もなにも持ってこずに来たレイン。
連れてきたアルテッサもなにも渡してはくれなくて。
着替えもなにもない。
とりあえず押し付けられたにしろ生活必需品としてなにもないのは困る。
レインには仕方なく昨日と同じ服を着せて街へ出た。

「…すごいな、イマドキの子供服は」

ここなら何かあるだろうと駅前のショッピングモールに来てみたのだが、如何せんありすぎだ。
1フロアすべてが子供向けの何かしらで埋め尽くされていて。
どこから見ていけばいいのかブライトにはわからなかった。
天井を仰ぐ代わりにレインを見れば、その目がどことなくキラキラしている…様な気がする。
さっきのケーキを見たときと同じだ。
それにかすかに希望を持って、何とか歩き出した。



ふと隣の気配が消えて慌ててあたりを見回すと、なんのことはないレインはすぐ後ろにいた。
立ち止まったレインを自分が置いていっただけらしいのですぐに彼女の元まで戻る。
なんで止まったのか、視線の先を見てみれば。

「…気に入ったのかな」

マネキンが着ている真っ白なワンピース。
首もとのリボンが可愛らしく、ノースリーブの下にはふんわりとしたスカートに繋がっている。
確かに可愛いと思う。
レインがきたらそれこそ。
そんなことを思うくらいにはブライトには余裕が出てきた。

「着てみる?」
「…?」
「すいません、これなんですけど…」

レインの返事を待つことなくブライトは店員を呼んでレインに試着を勧める。
流されるままにレインも試着室に押し込まれて。

「まぁ、とってもお似合いですわ!」

と店員が笑顔で褒めちぎるくらいそれはレインに似合っていた。
2人の視線が落ち着かないのか俯き加減で裾を握る姿は年相応で可愛らしい。
まぁ褒めることが仕事なのだがきっとこの言葉は本当だとブライトは思っておく。
握り締めた手をシワになるからとそっと開かせると、驚いたようにぱっと顔が上げられて。

「…どうしたの?」
「……」

また俯いてしまったのだがそれでも服を握ることはしなかったので、特に気にもしなかった。
言いたいことがあればまた家に帰ってまた聞けばいい。
そう思って店員と話を進める。

「この子に似合う服、いくつか見繕ってください」



結局今ブライトの手には大きな紙袋が三つある。
服から靴から下着まですべてを見繕ってもらって荷物は重いがこれなら当分何とかなりそうだ。
あのあとレインは着せ替え人形のごとく何度もなんども試着を繰り返され少し疲れてはいるようだが、たぶん彼女も楽しかったのであろう、表情が随分柔らかい。
今は最初に選んだ白のワンピースを着ている。
ひょこひょこと歩くたびに、その長い髪とスカートが揺れてなんとも目に楽しい。

「――あの」

本当に小さな声だったけれど、確かに聞こえた。
昨日の寝言を呟いたのと同じ声が。
びっくりして見れば、顔を真っ赤にして見上げてくる瞳とぶつかる。

「あ、りがとう…です」

言ってまたすぐに俯いてしまったけれど。
かすかに見える耳まで真っ赤で。
こんなとてつもなく可愛い生き物がこの世にいることに、少し感動した。

「どういたしまして」



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