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巫女にとって、髪は力であり命だという。
単純にその長さと美しさに、力が比例している
だからとても大切に伸ばし、毎日の手入れも怠らないと本人から聞いた。
その彼女がその髪を、長く青く美しい御髪の一房を左手に握り、なんのためらいもなく鋏を入れた。
「連れて行ってください、私の代わりに」
驚く間もなく、彼女の手の中にはらりと落ちた。
大切なもののはずだ、と思うのに、彼女の顔は晴れやかで。
出立の前の夜、それこそ巫女として忙しい式典の合間の時間をわずかでもいいから会いたいと
請われたのはこのためだったのかと、すぐに察しがついた。
「本当は一緒に行ければいいんですが…」
それはとても叶わないとわかっている。
だから、命のように大事なものを、いつでもあなたのそばに。
そうしてそれは、今、自分のもとにある。
上等な絹糸のように細くしなやかなそれをたとえ一本でも失いたくなくて、
白いリボンで編みこんで胸元にしまっていたそれを取り出した。
持ち主のそこから切り離されて随分と時間がたったはずなのに、
いまだにその艶と美しさは変わらない。
むしろ月光に照らされて光るそれは、さらに神々しく輝いて見えた。
口づけるとひんやりとした感触。
それが余計に、まだ触れたことすらない彼女の唇を思い起こさせた。
「必ず、帰ります」
あなたのもとへ。
<髪:思慕>
* * *
それは儀式。
「…やめてください」
今にも泣き出しそうな声が降ってくる。
跪いてそっと触れる足の甲はただひたすらに白い。
以前はもっと健康的に日に焼けていたのに。
巫女として神殿にこもる日が続き、いつの間にかこんなに白く美しくなった。
「シェイド様、お願い…」
思い出すのは昔のことばかり。
それもずっとずっと前、自分がまだ幼かった頃だ。
あの頃はいつも四人で遊んでばかりいた、といっても自分の目に映るのは
いつも揺れる赤い髪と、楽しげに笑う赤い瞳ばかりだったけれど。
お日様の下で駆け回って、たまにはそろって勉強もしたりして。
ずっとずっとそんな日が続くんだと思っていた、幸せだったあの頃。
「やめて…シェイド……」
久しぶりに名前を、名前だけを呼ばれた。
そう、以前はいつだって呼ばれていたのに。
だからそう、これは儀式なのだ。
これで最後。
「シェイド…」
声が少しくぐもった。
両手でもって顔を覆って涙を隠しているのだろう、きっと。
彼女のことなら何でもわかる。
否、わかっていた、今までは。
「これで、最後です」
「え…?」
彼女の右足、その親指の爪にそっと唇を。
「さい、ご?」
今までの人生はすべて、君の笑顔を見る自分のためだった。
君のその笑顔がすべてだった。
「誓って、」
巫女の体、空気、そのすべてが不可侵の聖域。
けれどせめて。
右足のその親指の爪の先、心臓から一番遠い場所に。
最初で最後の、たった一つの誓いのために。
「これからの人生はすべて、あなた様の護衛となり、影となって従いましょう」
<足の甲:隷属/爪先:崇拝>
* * *
「ふぇぁっ!?」
後ろでぱたんと扉を閉じた音が聞こえたと思ったらすぐに感じたくすぐったさに
思わず変な声を上げてしまった、というのがありありとわかる悲鳴だった。
反射的に振り返った青い目が涙で更にうるうるしている。
眉毛は垂れ下がって、口はわなわなと震え、困惑していると顔中が物語っていた。
あわててごめんごめんと謝るのが、驚きはすぐには収まらないらしく、
ふえぇといって胸にすがってきた。
そっと抱き寄せて視線を下げれば、目に入るのは露になった彼女の項。
いつもは長い髪に覆い隠されそうそう見えないそこはあまりに白くて。
珍しく結い上げられた髪のせいで晒されたそこは、驚くほど扇情的だった。
ヒソヒソと交わされる周囲の色めき立った会話に耐え切れず、
彼女を連れ出し適当な部屋にこもって隠してしまおう。
ただ、単に。
誰にも、見せたくない。
<首筋:執着>
ふたごで出来るのはこの程度かなぁと。
<キス22箇所>
髪:思慕/額:祝福、友情/瞼:憧憬/耳:誘惑/鼻梁:愛玩/
頬:親愛、厚意、満足感/唇:愛情/喉:欲求/首筋:執着/
背中:確認/胸:所有/腕:恋慕/手首:欲望/手の甲:敬愛/
掌:懇願/指先:賞賛/腹:回帰/腰:束縛/腿:支配/
脛:服従/足の甲:隷属/爪先:崇拝