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AM7:52
爽やかな朝のひととき。
しかしそれをぶち壊す男の叫び声がマンション中に響き渡った。
「み…ミルキ~~~ッ!?!?」
AM7:44
朝はあまり好きではない。
寝起きがいいとは決して言えないし、瞼を持ち上げても目が覚めるまでには随分時間がかかる。
そもそも低血圧気味な自分は、朝、他の誰より早く起きて愛しい妹を起こしたことがない。
よってその可愛いであろう、否可愛くないわけがない寝顔を見たことがない。
普段はブライトが起こしているらしいが、それも気に食わない。
あの可愛い妹があの男にいつ襲われないとも限らないではないか。
だったら自分で起こせばいいのだが、この家の誰よりも早く起きるなんてことは不可能だと自分が一番よく知っている。
この自分の寝汚さは20年間ずっと苦労してきた。
直そうと試みたことも1度や2度ではないのだが、そのたびにことごとく失敗している。
…だが。
奇蹟は起こった。
なぜかはわからないが、急にぱっちりと目が覚めてしまった。
普段の自分ならありえないと、何度も時計とカーテン越しの朝日を確認したが間違いない。
今日は休日でこの時刻ならまだ誰も起きているまい。
突然降って湧いた喜びに胸をときめかせスキップで廊下に出れば、ミルキーの部屋はすぐそこだ。
起こさないように細心の注意を払って、そっと部屋の扉をひらく。
柔らかな朝日に包まれたその先。
子供用の小さなベッドには、いるはずの幼子の姿はなかった。
そして冒頭の叫びに繋がる。
AM7:53
「…うるっさいなー休みの日ぐらい静かに寝かせてよぉ」
それから数秒あるいは数分たってから、茫然自失といったていのシェイドに声かけたのはパジャマ姿のファインだった。
ついでに言うと、眉間にはシワが寄り眉毛は跳ね上げられ口はへの字に曲がっている。
腕を組んで仁王立ちするその姿は、誰が見ても怒っていることは明らかだろう。
しかし声にゆっくりとぎこちなく振り向いたシェイドは、そんなファインの肩をがしっと掴み思いきり揺さぶり出した。
「なぁミルキーどこいった!?もしかしてさらわれたのか!?!?」
「…はぁ?」
「あんなに可愛いんだおかしくないよな!」
なにやら勝手に暴走しているシェイドを冷たい目でみやるが、まったく気付く気配すらない。
とりあえず気持ち悪いから揺するのはやめてほしい。
しかし暴走中のシェイドにはなにを言っても無駄だとわかっているから、外部からの制止を待つしかない。
本当にやっかいだ、ミルキーに関してのみ普段のクールっぷりからは考えられないような暴走ぶりを見せるシェイドは。
ミルキーは可愛くて好きなのだが、この兄はどうにもいただけない。
はっきり言ってウザい以外の何者でもない。
「あぁ俺のミルキー…」
「いや、ミルキーあんたのモノじゃないから」
とりあえず聞き逃せない言葉を耳にしたので突っ込んでみるものの、やはりというかまったく聞いていない。
その上そろそろ本気で目が回ってきた。
早く止まれと切に願う。
「きゃ~!」
ファインの願いが通じたのかはたまたただの偶然か、その声はシェイドの耳にも届いた。
今の声こそ、シェイドの探し求めていたミルキーの声だったから。
一瞬動きが止まったかと思うと一目散にたいして長くはない廊下を走り出すシェイドに、ファインはぐったりと大きな溜息をついた。
AM7:59
「うるさいわね」
「うるさいですね」
レインがティーカップをソーサーに置いて呟いた。
それに答えるブライトは、膝に抱えたミルキーの手からストロー付のコップに入ったミルクを取り上げる。
ちょっと不満気な顔で口をとがらせるが、その姿まで愛らしい。
なだめるように頭をなでてやればもっとというようにすり寄ってきて、きゅっと目を閉じた。
「それじゃ、しょうがないからご飯にしよっか」
ブライトの分のティーカップも持ち上げて、レインが溜息混じりに立ち上がった。
いつも仕事だったり学校だったりで誰かしらが欠けているのだが、今日は珍しく全員揃っていて。
せっかくだから、起きるのが遅い2人に合わせてブランチにしようかと話していた。
それがなぜか珍しく、いつもより随分早い時間に起き出した2人が騒いでいる。
正しくは1人のせいでもう1人も起きてきたのだがこのさい一緒だろう。
どっちにしろ目が覚めればお腹が空いたと騒ぐ子がいるし、ミルキーの腹具合もそろそろ限界だ。
そう思ってレインはソファから離れたのだが。
「僕も手伝うよ」
だから少し豪華に遅めの朝食にしよう?珍しいブライトの申し出に一瞬目を見開いたレインだったが、笑ってありがたく受けることにする。
誰かとキッチンに立つことはほとんどないからちょっと嬉しくて。
ミルキーにもうすぐうるさいのが来るからねと言って、2人はリビングを離れた。
AM8:47
うるさかったシェイドもミルキーを離すもんかとばかりに抱きしめて、なんとか静かになった。
寝ぼけ眼だったファインも顔を洗って着替えた今では随分とさっぱりした顔をしている。
元々しつこい方ではないのだ。
それに今は絶叫によって自分を叩き起こした憎き男より、目の前に並ぶいつもより幾分豪華な朝ご飯の方が大事である。
それはミルキーも同じようでまだ離乳食を始めたばかりだからそれでも食べられるものは随分限られるけれど、色鮮やかに盛り付けられた朝食はそれだけで彼女の興味を引くらしい。
頑張って良かったと、レインとブライトは顔を見合わせて微笑んだ。
「食べていい!?」
「料理は逃げたりしないから」
苦笑気味にファインに返して、ミルキーに目を向ければ早く食べたいのかシェイドの腕の中でもがいている。
それにちょっと傷つきながらも子供用のイスにミルキーを座らせるシェイドを見て、レインも手を合わせた。
「いただきます」
「ぃたーきましゅ」
聞こえた声に一瞬止まり、ついですぐにミルキーを振り返った。
ちらりと視界に入ったファインやブライトも驚きにこれ以上ないほど目を見開いている。
「…ミルキー」
「ぁー?」
「いま、なんて言った?」
スプーンを握り締めたミルキーは自分が全員の注目を集めているとわかってきょとんとしている。
しかし隣のシェイドは必死だ。
「ぃたぁきましゅっ」
嬉しそうに笑うミルキー。
それを見て回りの4人もつられて笑った。
食いしん坊の愛し子が、初めて言葉をしゃべった朝。
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空き時間の合間に携帯でぽちぽち打っていたんですが。
ありえないくらい親指が激しく動くよ!
こんなにさくさく楽しく書いたのは初めてかもです…
自分でも驚き。
この調子で別に考えてるシリアスも書けたらいいな…
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